毎月給料日に渡される給与明細。
「なんだかよくわからない項目&数字がたくさん羅列しているなぁ」「振込合計だけ見ればいっか!」という方が多いのではないしょうか。
今回は給与明細の項目を解説していきますが、今後まとめ予定の会社員の節税方法を正しく理解するために、以下まとめていきます。
- 給与明細項目の説明(収入編)
- 給与明細項目の説明(控除編)
※雇用かつ協会けんぽに加入している人の給与明細を例にしています。
給与明細項目説明(収入編)
今回は一般的な項目を説明していきます。
この項目合計が1年間集計されたものが年収(1年間の収入)となります。
基本給
各種手当を含まない、給料のベースとなる金額です。
業務内容・能力・勤続年数・年齢等を加味して決定され、会社により方針が異なります。
時間給(時給)で働いている人は、この欄に「時給✕該当月の総労働時間」の金額が記載されているケースが多いです。
各種残業手当・休日出勤手当(※1)
名称は様々ですが、法律で支給が定められている手当です。
以下の「本来は働くはずではない時間帯・日(※2)」に働いた場合に支給されます。
- 法定時間「内」労働
割増賃金の対象外。会社で定められた労働時間を超えて働いたが、労働基準法で定められた基準を超えていない。
- 法定時間「外」労働
割増賃金率2割5分。労働基準法で定められた基準を超えて労働している。
(例)1日の所定労働時間が7時間(←会社で定められた労働時間)
→1日7時間30分働いた:30分が法定時間内労働。
→1日8時間30分働いた:1時間が法定時間内労働。30分が法定時間外労働。
- 深夜労働
割増賃金率2割5分。PM10:00〜AM5:00までの時間帯に労働することをいいます。
(例)労働条件通知書で定められた労働時間は10:00〜19:00(休憩1時間)。22:30まで業務を行っていた。
→通常時1日8時間労働のため、19時を超えて労働した分は法定時間外労働対象。
19:00〜22:00(3時間):法定時間外労働(割増賃金率2割5分)
22:00〜22:30(30分):法定時間外労働(割増賃金率2割5分)+深夜労働(割増賃金率2割5分)
- 休日労働
割増賃金率3割5分。法定休日(※3)に労働することをいいます。
<前提>週の起算は月曜日のため、1週は(月)〜(日)。労働条件通知書で定められた休日は
土日祝日。
(例①)土曜日に休日出勤。日曜日は休日。
→週1休日を確保できている(日曜日)ため、法定休日労働にはあたらない。
(例②)土曜日・日曜日ともに休日出勤。
→週で1日も休日を確保できていない。一番後ろの休日(日曜日)が法定休日労働にあたるため、割増賃金率3割5分となる。
(※1)労働基準法により、1日に8時間、1週間に40時間超えた部分が時間外労働となっています。日と週どちらも法定時間外労働をした場合、時間外の計算方法が異なります。休日は週1日の休日が必要。(変形休日制の場合は特定の4週で4休が必要。)従業員が時間外・休日労働をする場合は、会社(企業)と”法定外時間外・休日労働に関する協定書”(36協定)の締結が必要です。
(※2)労働基準法・就業規則・労働条件通知書等にて定められたものによる。
(※3)該当週で一番後ろにくる休日
- その他手当
法律で支給が定められている他に、以下のような手当があります。
- 通勤手当
- 役職手当
- 住宅手当
- 家族手当 etc…
これらの手当は会社に支給義務はありません。ただ、社員の業務上の負担軽減や、評価として明示しやすい等のメリットから多くの会社で取り入れられています。
給与明細項目説明(控除編)
上記収入から給与支給時に控除される項目についてまとめています。
大きく分けると、社会保険料と税金が引かれています。
詳しく見ていきましょう。
社会保険料①<健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料>
「健康保険・介護保険・厚生年金保険」は病気やケガ、老齢、介護など生活していくうえでのリスクに備える公的保険です。
この3つは、会社と従業員と折半で支払いを行っています。
- 健康保険料
保険料額を決める保険料率は都道府県により異なります。また、保険料の決定は”標準報酬月額”(※4)により決定します。
「健康保険」…従業員とその家族が業務外の病気やけがをした際に、医療費の給付を行う制度です。また、出産や死亡時にも給付が行われます。
- 介護保険料
健康保険の加入者が40歳になると「介護保険第2号被保険者」となり、介護保険料の支払いも必要となります。
健康保険料と同様、保険料額を決める保険料率は都道府県により異なります。また、保険料の決定は”標準報酬月額”(※4)により決定します。
「介護保険」…加入者が一定の条件を満たした介護が必要と診断された際、介護保険サービス(給付)が利用できる
- 厚生年金保険料
厚生年金保険料を支払う対象者は、国民年金の「第2号被保険者」とよばれます。国民年金の「2階」部分にあたるのが厚生年金で、厚生年金保険料には国民年金保険料も含まれています。
他保険料と同様、保険料額を決める保険料率は都道府県により異なります。また、保険料の決定は”標準報酬月額”(※4)により決定します。
「厚生年金保険」…厚生年金に加入している被保険者は、老後に「老齢厚生年金」が支払われる他、けがや病気で障害が残った時は「障害厚生年金」、被保険者が亡くなった時は遺族に「遺族厚生年金」の支払いがあります。
(※4)社会保険料の計算を容易にするため、給与を一定の幅に区分した報酬月額に当てはめて決定。標準報酬月額の決め方には数種類ある。(決定の時期がいくつかある)
社会保険料②<雇用保険料>
「雇用保険」は、失業や休業等で労働者が働くことができなくなった際、一定期間にわたって生活や雇用をサポートしてくれる制度です。
雇用保険と労災保険で「労働保険」とよばれており、労災保険料は全額を会社(事業主)が負担しています。
- 雇用保険料
雇用保険の掛け金のこと。
保険料は会社と従業員で負担しますが、折半ではありません。保険料率・負担割合は業種により異なります。
「雇用保険」…労働者が失業した時などに生活と雇用の安定を図るための公的保険制度です。雇用保険に加入していると(していたら)、基本手当(求職者給付)・教育訓練給付・育児休業給付等がうけられます。
*この記事で雇用保険の制度の一つ、教育訓練給付についてまとめています。
税金<所得税・住民税>
税金は給与全体から算出されるのではなく、「課税所得」から計算されます。
- 所得税
個人が1年間(1月〜12月)に得た所得に対して課せられる税金。
会社員の場合は通常、毎月の給与からおおそよの金額が天引きされており、「先払い」をしています。(源泉徴収)
そして年末調整の際に、多く払った場合は所得税が「還付」/支払いが少ない場合は「徴収」されます。
なお、所得税の税率には「累進課税制度」が採用されており、課税所得に応じて段階的に税率があがります。
- 住民税
個人が1年間(1月〜12月)に得た所得に対して課せられる。
会社員の場合は通常、【6月〜5月】に【前年の所得から算出された住民税】が天引きされます。住民税は「後払い」、税率は一律10%です。
退職後住民税は個人で支払う必要があり、かつ前年の所得により税金が算出されているため、収入が少なくなる場合は注意してください。
このことから会社員は、課税所得を下げることで、税金を抑える(=節税する)ことができるというわけです。
まとめ
今回は、給与明細の項目詳細をまとめていきました。
- 給与明細項目の説明(収入編)
基本給・各種残業手当・休日出勤手当・その他手当
- 給与明細項目の説明(控除編)
社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)・雇用保険料・税金(所得税・住民税)
「会社員の節税方法」は「課税所得」を下げることについては、後日まとめ予定です。
今回で給与を構成している項目を理解をしたうえで、各控除制度がどのように作用しているか今後学んでいきましょう。
正しく制度を利用していくためには、基本が大切です。
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